未登記建物に関する手続き

一戸建て・マンション・倉庫・店舗等様々な建物がありますが、現在ある建物は建築された時に、土地家屋調査士という国家資格を持った人が法務局に対して『建物表題登記』という登記を行ない、「この地番の場所にこういう建物が建ちましたよ~」ということを公的に証明する手続きを行なっています。

そして、司法書士という国家資格を持った人が法務局に対して、『所有権保存登記』という登記を行なうことで、「この地番のこの建物はこの人の持ち物件ですよ~」ということを公的に証明してもらえるようになります。

基本的にはこのような手続きを経て所有者がそれぞれの物件を正式に取得するわけですが、中古物件を取得しようとする時や、相続等で物件を取得することになった時等に、稀に未登記建物に出会うことがあります。

未登記建物を取得したいと思った時、取得することになってしまった時、どのような手続きをすれば良いのかについて、ここでは説明していきたいと思います。

未登記建物とは?

そもそも未登記建物とはどういうものかというと、前段で書いた『建物表題登記』が成されていない建物のことを指し、その住所にそんな建物は存在しないと国が認識している状態となっている建物ということです。

建物を建築する時は必ず国に届け出る(法務局で登記をする)ことが法律によって義務付けられていますので、これを怠ると罰金10万円というのがそもそもの根本的なルールです。

しかし、実際にはこの罰金が科される事例がほぼ無いらしいということで、新築した人が忘れちゃったりして時間経過とともにそのまま次の人手に渡って・・・
ということで未登記のままとなってしまっている建物は残念ながらちらほら存在します。

未登記建物を取得した人がこの罰金を支払うことになるわけではないのでそこはご安心いただいて、もし未登記建物を取得することになった場合はこの記事を参考に、適切な手続きを行なうようにしてください。

未登記建物のままだと何が問題なの?

存在しないはずの建物が現実に建っていることによってどういう事が起こるのか、現実に建っているのに存在しないこととされていることでどういう事が起こるのか、具体的によくあるお困り事例を挙げてみます。

①親の所有していた建物を相続したので見に行ってみたら全然知らない人が住んでいたので役所に相談したら、未登記建物のため公的に所有権を主張することはすぐにはできないと言われた。

②自社物件の土地と建物を担保に融資を受けようと思ったら、建物が未登記なので建物では融資が受けられない、未登記建物土地上に存在しているため、土地も担保にできないと融資を断られた。

③手放したはずの未登記建物の固定資産税を支払うよう市区町村役場から手紙が届いた。

こういったことが起こります。

取得した目的や経緯によってはこれらに特段の問題を感じない人もいるかもしれませんが、建物が未登記状態であることを国は容認していないということと、未登記である以上は所有権を主張することは基本的にはできないということは忘れないようにしてください。

どのような手続きが必要か?

土地家屋調査士さんに依頼して建物表題登記をしていただき、司法書士さんに所有権保存登記をしてもらいましょう。
これが一番本筋のルートであり、最終的なゴールとなります。

自分のお住まいにするためや、事業用の土地建物として仕入れる際に未登記建物が含まれていた場合は、所有権を主張できない状態では生活や事業の安全が担保されませんので、取得後すぐに相談されることをおすすめします。

行政書士が手続きを行なうパターンとして、所有している未登記建物を誰かに譲る時や、相続などにより住む予定のない遠隔地の未登記建物を取得してしまった時があります。

すごく簡単に言うと、今更お金をかけて自分の名前で登記したところで・・・という状態の未登記建物と関わることになった場合ということです。

未登記建物を売買または譲渡する場合

誰かに未登記建物を譲渡するケースでは、譲り受けた人が登記を行なってくれなかった場合、自分が使っているわけではないのに前項の③で記載した、市区町村役場から固定資産税を払えという支払いをストップさせることはできません。

その土地を管轄する市区町村役場に対し、『未登記建物の変更届』でこの建物は自分のものでなくなったよという事を正式に届け出ることで初めて、その未登記建物にかかる固定資産税の支払い義務をお譲りした次の人へ引き継ぐ事ができるようになります。

そのため、売買契約書を結ぶ際に未登記建物変更届を提出することに同意及び必要であれば委任状や申請書に押印等をいただいておく必要があります。
(考えたくはありませんが、契約書を結んだあとで気がついて届出の同意をお願いしても逃げられる可能性は0ではありません)

この手続は行政書士、または、土地を譲り渡したご本人様や譲り受けたご本人様しかできない手続きとなりますので、私のところへ不動産屋さんやご本人様からご相談が来てお手伝いをさせていただくことが多いです。

相続財産に未登記建物が含まれていた場合

相続財産の中に未登記建物が含まれていると判明した場合、誰がその建物を相続するかを含めた遺産分割協議が問題なく行われ、遺産分割が適正に成されれば、その未登記建物を相続した人が表題登記及び所有権保存登記を行なえば適正にその建物を取得することが可能となります。

しかし、遺産分割協議は適正に行われたのだけれども、未登記建物を相続した人がその建物に住む予定はなく、今後どのようにしていくか取り壊すのかも含めてまだ決まっていないというケースも往々にしてあります。

この場合はまず一旦、市区町村役場へ行って未登記建物の変更届を行ない、相続によって固定資産税を納めるべき人間が変更になったことを明らかにし、しっかり納税義務を果たした上で、未登記建物をどうするかについてじっくり考えていただければと思います。

【結論】
未登記建物を取得した際は、登記を行わなければならない!

なんらかの事情によってすぐに登記を依頼するのが難しい場合は、未登記建物変更届を必ず行なわなければならない!

未登記建物にかかわる手続きで誰に相談したら良いのか迷った時は、弊社までお問い合わせください。

行政書士、司法書士、土地家屋調査士の3士業の知識を紡ぎ合わせ、より良い方法でのお手続きをご提案させていただきます。