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農地を相続した時は

農地を相続や遺贈によって取得することになった時は、その農地を管轄する農業委員会に対して届出または許可申請を行わなければなりません。

それぞれ、どのようなパターンでどのように手続きを行わなければならないのか、わかりやすく簡単に説明したいと思います。

農業委員会によって手続きが異なる場合が多々ございますので、実際に手続きを行なう時は必ず管轄の農業委員会へ直接ご相談に行くか、行政書士にご依頼いただきますようご留意ください。

法定相続人が農地を相続し、そのまま農業を続ける時

法定相続人とは、法律によって定められたお亡くなりになった方の財産を相続する権利を有している人の事を指します。
ざっくり言えば、お亡くなりになった方の配偶者(夫や妻)や子供等、近い血縁者の事です。

この法定相続人が適正な遺産分割を経て田や畑を相続し、そのまま農業を続ける場合に行なう手続きは、『農地転用3条届出』です。

相続によって農地の所有者が変更になったことや、この農地で新たな耕作人となるのはこの人ですよということを農業委員会に届け出るための手続きです。

農地転用3条届出の手続き方法

基本的にはどの農業委員会においても以下のような流れで手続きを行います。

  1. 農地を管轄する農業委員会へ、相続による移転手続きを行ないたい旨を相談する
  2. 所定の申請書類を受け取り、正確に記載する
  3. 必要添付書類を全て揃える
  4. 農業委員会へ申請予約の連絡をする(予約不要の場合もあります)
  5. 予約した日時に申請書類や添付書類一式を持って農業委員会窓口へ行く

それぞれについて詳しく説明していきます。

①農業委員会へ相談

申請の相談は基本的には電話で必要書類等の案内をしてもらえますが、農地の数が多い場合や、他の手続きも必要になる可能性がある場合などは窓口へ事前相談に来ることを勧められます。

その場合は自分の身分証明書と、その農地を相続することがわかる書類(遺産分割協議書の写し等)を用意して窓口へ相談に行きましょう。
それぞれの農地について必要な手続きについて説明してもらえます。

このタイミングでは、『農家台帳の閲覧及び取得』を行なうように案内されることが多いと思いますので、必要な書類をその場で記入して現在の登録状況を確認し、今回自分が行なうべき手続きを確定させましょう。

②申請書類の作成

②の届出書類は農業委員会の申請書類はHPからPDFデータをDLして作成するパターンが多いですが、稀に申請書類は郵送のみの場合や、窓口にて受け渡しのみの農業委員会もありますので、①の問い合わせの際に申請書類の入手方法についてもしっかり確認しておきましょう。

HPからDLできる場合は、一緒に記載例も掲載されていることがほとんどですので、記載例を参考に間違いの無いよう丁寧に記入していきましょう。

また、農業委員会へ提出する書類は、押印が必要とされる事が大半ですので、認印で良いのか、登録実印での押印が必須なのかについても確認しておくことをオススメいたします。

③添付書類の準備

農業委員会によって求められる添付書類は変わりますので管轄の農業委員会に言われた書類を全て揃えるしか無いのですが、基本的には以下の書類のいずれか(または全部)を添付するよう案内されます。

  • 当該農地の土地履歴事項全部証明書
  • 当該農地の公図または地図
  • 法定相続人がわかる戸籍一式または法定相続情報証明書
  • 遺産分割協議書の写し
  • 申請者本人の身分証明書等(住民票等)
  • 申請者本人及び相続人の印鑑証明書・・・etc

④申請予約

農業委員さんは日中、農地の現地調査等に出払っていて役所に不在なこともあるため、申請に行く前に電話でアポイントを取る方が望ましいです。

だいたい誰かいるからアポは不要だよ!と言われる場合もありますが、その場合でも「今から30分後ぐらいに行くけど大丈夫ですか?」と確認を入れておくほうが待ちぼうけをさせられる心配はなくなります。

私は事前連絡した時に「いつでもいるから大丈夫!」と言われたのを信じてなんの連絡もせずに寄ったら担当者不在で追い返された事例が2箇所ほどあります笑

⑤届出!

届出書類をしっかり記入し、添付書類も全て準備ができたら窓口に申請に行きましょう。
申請に行く際は、申請内容がわからなくなることのないように、提出書類は全てコピーをとって手元に控えを持っておくことをオススメします。

窓口にて補正を言われる可能性もありますので申請書のコピーも持って行き、その場で自分の控えにも訂正した箇所を同じように記入しておきましょう。

自分が更にこの農地を他の方に譲る時や、自分の相続の際にこの控えがあれば次の人が届出をする際に調査から始めなくて済むので随分楽になると思います。

法定相続人以外が農地を譲り受け、そのまま農業を続ける時

法定相続人以外の方が遺贈等によって農地を取得することになった時や、相続人さんに農業が出来る人がおらず、所有権は相続人さんにあるものの、賃貸借契約等によって農業を法定相続人以外の人がすることになった時は、『農地転用3条の許可申請』が必要となります。

血縁によらない農地の承継となるため、こちらは農業委員会の許可を得なければならず、その土地で新たに農業をしようとする者が本当にちゃんと農業が出来るのか?というところを証明するための手続きです。

届出と違って許可申請ですのでハードルは上がりますが、日頃から農業に従事していて、農業委員会とコミュニケーションがとれている人であれば自分で申請することは可能かと思います。

農地転用3条許可申請の手続き方法

こちらも農業委員会によって変動はありますが、基本的には以下の手順で申請を行います。

  1. 農地を管轄する農業委員会へ、3条許可申請の事前相談(協議)に行く
  2. 申請の要件を満たしているかを確認し、所定の申請書類を作成する
  3. 必要添付書類を不備なく全て揃える
  4. 許可申請受付スケジュールを確認し、農業委員会へ申請予約をとる
  5. 予約した日時に申請書類や添付書類一式を持って農業委員会窓口へ行く

ひとつずつ詳しく説明します。

①事前相談(協議)

事前に電話で3条許可申請についての相談を行いたい旨を伝え、事前相談のアポをとりましょう。
その際に持ってきて欲しい物などの案内があると思いますが、最低でも以下のものは用意して相談に行くようにしてください。

  • どの土地の話かわかるもの(地図や公図等)
  • 土地の詳細がわかるもの(登記情報や名寄帳の写し等)
  • 3条申請を行なうことになった経緯がわかるもの(遺言書や賃貸借契約書の写し等)
  • 自分を証明するもの(免許証等の身分証明書や耕作証明書等)
  • 農地周辺を含めた現況写真(必須ではありませんがあると話が早いです)

②要件確認・書類作成

許可申請を行なうために必要な要件が各農業委員会で設定されていますので、その要件をしっかりと確認し、自分がそれを全て満たしているのかどうか検討してください。
管轄農業委員会によって求められる要件は変わりますが、例えば以下のようなものがあります。

  • 当該農地に対して正式な耕作の権利を有していること
  • 農地の全てを効率的に利用して耕作できると認められること
  • 農地の全てで通常求められる水準の生産性が実現できること
  • 申請者が農作業に常時従事すること
  • 耕作の内容が周辺の農地等に支障が出ないこと  ・・・etc

求められる要件を満たしている者が適正な方法、内容にて農業を行ないますということを作成する書類と添付書類によって証明していくことになります。

③添付書類の準備

農業委員会によって求められる添付書類は変わりますが、証明すべき事項が増えるため、届出よりもかなり多くの添付書類を求められます。

各所に協力を求めなければならない書類が含まれる場合も多々あるので、申請期日に確実に間に合うようにスケジュールを立てて計画的に収集していきましょう。

  • 当該農地の土地履歴事項全部証明書
  • 当該農地の地籍図(公図)及び地図
  • 法定相続人がわかる戸籍一式または法定相続情報証明書
  • 遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 賃貸借契約書の写し
  • 譲渡人及び譲受人の住民票
  • 譲渡人及び譲受人の耕作証明書
  • 譲受人の耕作状況一覧
  • 譲受人の所在地から当該農地までの経路図
  • 現況写真・・・etc

④申請予約

届出と違って許可申請の場合は申請締切があるため、締切日前には申請が立て込むことなどから、事前にアポイントを取ることを求められることが多いです。

期日ギリギリで予約をとると、他の予約で既にスケジュールが埋まってしまっていて予約がとれなくなる可能性があるだけでなく、追加書類の提出を求められた時に期日内に用意できずに間に合わなく可能性もあります。

提出書類が揃うめどが立ったタイミングで余裕をもって、先に申請の予約をとっておくと良いでしょう。

大抵の場合は20日が申請締切となり、20日までに補正や追加書類の提出も終えている申請が翌月の農業委員会会議にて議案に上げていただけるという流れになっています。

⑤許可申請!

書類が全て問題なく用意ができたら、控えを用意した上で約束の時間に遅れないように申請に行きましょう。

申請書類の内容や添付書類を確認していただく時に、耕作計画についての説明を求められたり、排水計画についての説明を求められたりします。
質問事項に答えられなかったり、申請内容に不透明な部分がある場合は受付をしてもらえないこともあります。

自分たちで申請を行う場合は、可能であれば譲渡人と譲受人の双方で窓口へ出向くか、申請の内容やそこで行なう農業について十分理解をしている人が申請に行くようにしましょう。

農地を相続した場合の手続きまとめ

農地を相続(または遺贈等により取得)した場合で、そのままその土地で農業を行なう場合に必要な手続きは『農地転用3条の届出』または『農地転用3条の許可申請』です。

単純に法定相続人が相続した場合は届出でよく、比較的簡素な手続きで適正に農地を引き継ぐことができます。

法定相続人以外が農業を行なう場合は許可申請となりますので、手続きや必要書類も一気に複雑化しますので、管轄の農業委員会としっかり事前相談を行ないましょう。

申請は、その書類の内容や経緯、農業計画まで全てを理解している人が窓口へ行き、担当者へ説明をする必要がありますのでご注意ください。

手間も時間も大変かかりますので、自分でその時間を捻出するのが難しい方は、農地転用に詳しい行政書士にご依頼することをオススメします。