先日、ある行政書士法人の代表者さまとお打合せをする機会を頂き、貴重なお話を拝聴することが出来ました。
その方は大きな行政書士法人を運営している一方で、別事業の会社も運営していらっしゃるとてもやり手な社長さまなので、私のような者が個別にお話を伺えるような機会に恵まれることは相当の幸運でした。
お話をさせていただいた中で代表者さまが、私が常々思っていたことと同じことを考えていらっしゃり、また、実現すべく戦っている様を見せて頂き、非常に感銘をうけたので今日はその事を書いてみたいと思います。
まぁ、一介の行政書士に過ぎない私が同じことを思っていただなんておこがましくもあるのですが、一介の行政書士に過ぎない私でさえ、その考えに基づいて行動を起こそうとすると波が立ち、横槍が入る状態です。
この代表者さまのように立場と力がある人が動けばそれはそれは大きな障害が生じるのでは無いかと思ったのでそのことについて質問させていただいたのですが、やはり大きな反対の波が押し寄せているようで、大変な戦いをされておりました。
本当の利益とは何か?
『自社の目先の利益よりも、一時的にマイナスになったとしても行政書士全体の向上を行なう方が最終的には自社にとっても利益になるのではないか』
私が常々考えていたことはこれです。
ただ、これを公に発言すると白い目で見られる事が多く、また、行動しようとするとものすごい勢いでやめろ!と糾弾されてきました。
お前が損を打つのは勝手だが、そんな動きをする者が出てくると他の行政書士にまでとばっちりが来る。こちらまで割を食うからやるな!という御意向なわけです。
自分たちの既得権益をわずかにでも侵されたくない、新規参入者に自分たちの利益をわずかでも奪われる事があってはならない。だから、そのような者が現れれば全員で潰す。
残念ながらそれが現状の行政書士の世界での多数派なのだと思います。(もちろんあくまでも多数派というだけであって、全員がそうというわけではありませんよ)
だから業際問題も教えない、新人さんに本当に必要な研修も行わない、会としての組織は存在しているのに、先輩が先輩として正常な機能をしていない。という悲しい現実があります。
私は自分自身が全くの未経験からこの世界に入り、コネも知識もない中でどのよう生き残っていくか、どのようにして人脈を作っていくか、他士業の方とどのように付き合っていけばいいのか、なんのヒントも無い中で毎日本当に必死でした。
だからこそ、今この考えにいたっているのだと思います。
個の損失と公の利益
前段に挙げた代表者さまはこう仰っていました。
『自社法人が専門として行なっている手続き業務を全て、私たち行政書士だけで担う状態を作りたい!』
そして、そのために必要な事であれば一時的に自社の依頼者さまが他の行政書士に奪われる可能性が出ることも、優秀な後輩が出てきて売り上げがさらわれてしまう事も厭わないと。
そうして実際に積極的に見込みのある新人さんへ研修の機会を与えたり、実務に携わる機会を与えています。
その行動に対し、社外の行政書士だけでなく社内にいる行政書士たちにさえ、なんでそんな事をするんだという反発の声が多数上がっているとのことでした。
行政書士への世間からの認知なんてたかが知れている。それならもっと世の中に行政書士という職業を広く知ってもらわなくてはならないし、知っていただくには行政書士全体の質の向上を行なわなくてはならない。そのためには目先の利益など小さなことだと言い切って行動されているのです。
その手続き業務の全国案件総数のうち、行政書士による申請はほんのわずかです。そこの行政書士が関与する割合を増やしていく事で行政書士全体としての利益を上げる。そうすると自ずと自社の利益も上がってくるし、そちらの方がよっぽど将来性があるのではないかと考えているのです。
そしてそのためにはどんどん質の良い行政書士を育てなければ未来は尻すぼみではないかと。
現在の自分の利益を失わないために実務を教えたくないというのはわかります。自分が苦労したならした分だけ尚更、なぜそれを他の者へ自分の時間を使って教えてやらなきゃならんのか?と言われれば確かにそうです。
無償で実務を事細かく教えてやるべきだ!なんて事はさすがに私も思っていません。
ただ、考えるために必要なヒントを出すことや、その時々に発生する悩みに寄り添うことは先輩が積極的に行なう方が良くないですか?ということです。
私が行なってきたこととこれからについて
私自身も本当に微力ではありますが、行政書士の質の向上のために必要な事は何かを考え、それを志のある新人さんやこれから行政書士を目指そうとしている方に出来るだけお伝え出来る機会を様々な場面で設けてきました。
そう思って活動を始めた当初は、手を伸ばしてきた人全員に無条件かつ無償で情報を提供していました。そうすると、これもまた質の低下につながるのだという結論に至りました。
ただ与えられる情報でしか行動出来ない人間は自営業には不向きですし、自分で考えて行動を起こしていないので責任感が希薄になることも原因なのかと思います。
そのように残念ながらその想いがうまく伝わらない事も多くあったり、自分の業務が忙しくてなかなかそこに大きく時間を割く事の出来ない事情もあって、今は方針を変えています。
誰にでも無条件に無尽蔵に情報を与えるのではなく、優秀な人材に対してどんどんヒントと情報と機会を提供していくことが質の向上につながるのではないかと今は考えて行動しています。
その上で自分で考えて自己責任でしっかり行動することが出来る人材がどんどん増えていけばもっと行政書士という職業は広く認知されていくでしょうし、今ある風評被害も軽減していくものと思います。
今はまだ本当に微力どころか微微微力くらいのものですし、業務が忙しくてわずかな時間しか割けない現状ではありますが、もっと多くの優秀な方々に効果的に良い情報を発信していくためには何が必要で、どう動くべきか、私ももっともっと考えて、しっかり勉強し、研鑽していきながらしっかり行動していきたいと思っています。