オークションサイトやフリマアプリが爆発的に流行り、今はたいそうなECサイトを自分で用意しなくても、それらの媒体を通して誰でも簡単にネットで物を販売することが出来るようになりました。
誰でも簡単に物を売買するということが出来るようになったため、売買についての正しい知識や法律を知らない人も『気軽に』物を売ってお金を得るという行為をするようになりました。
その中には未成年者も多く含まれています。
そこで今日は、未成年者でも古物商許可を取得出来るのか?について書いてみたいと思います。
まずは結論から
未成年者が古物商の許可を取得することは原則できませんが、ある一定の条件を満たす場合には許可申請者になることは可能です。
しかし、そのような申請を行なうのは実務的には全くお勧めできません。
回りくどい言い方になるのでわかりづらいと思いますが、回りくどく言わざるを得ない理由について1つずつひも解いていきますので興味のある方はこの先もお読みいただければと思います。
最初に理解しておいていただきたいのは、未成年者が古物商の許可を取得することは原則出来ません。
なぜなら未成年者は欠格要件に該当しますので、そもそも許可取得申請を行なう権利がないからです。
ただし、一定の条件下においては申請者にはなれます。
しかし、申請者になれたとしても、古物商の許可を取得するためには『管理者の設置』が必須です。
この管理者に未成年者はなれません。
未成年者が古物商の許可を取得しようと思った場合、一定の要件を満たして申請者になれたとしても、成人している管理者を用意する必要があるということです。
欠格要件とは?
欠格要件とは、申請者の適性が法に従った適正な業務の遂行を期待し得ない者を類型化して排除することを趣旨として定められたものであり、申請者が欠格要件に該当する場合には許可を受けることができません。
ものすごく簡単にいうと、一般的に考えてこういう要件にあてはまる人に許可を与えてもまともに商売が出来るとは思えないから最初から申請出来ないようにしてしまいましょうというルールのことです。
営業許可を得て商売をすることが前提なので、取得しようとする許可の種類によって欠格要件も変わってきます。
古物商許可申請における欠格要件には以下のものがあります。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 罪種を問わず禁錮以上の刑、窃盗、背任、遺失物、占有離脱物横領、盗品等有償譲受け等の罪で罰金刑、古物営業法違反のうち、無許可、許可の不正取得、名義貸し、営業停止命令違反で罰金刑に処せられ、刑の執行が終わってから5年を経過しない者(執行猶予期間中も含まれる)
- 犯歴及びその内容、暴力団等との関係から判断して、集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれがあると認められる者
・暴力団員(「暴力団員による不法な行為の防止等に関する法律」第2条第6号に規定以下同様) ・暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
・その他、暴力団以外の犯罪組織の構成員又は過去10年の間に暴力的不法行為等(改正古物営業法施行規則第1条に規定)を行った者で、組織の検挙率、動機、背景等から強いぐ犯性が 認められる者 - 暴力団員による不法な行為の防止等に関する法律第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過経過しない者
- 住居の定まらない者
- 古物営業法第24条の規定により、古物営業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
(法人が許可の取消しを受けた場合は、その当時の役員も含む) - 古物営業法第24条の規定により、許可の取り消しに係る聴聞の期日等の公示の日から、取り消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しない者
- 心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定めた者
- 営業について成年者と同一能力を有しない未成年者
(婚姻している者、古物商の相続人であって法定代理人が欠格事由に該当しない場合は、申請可能) - 営業所又は古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者として認められないことについて相当な理由のある管理者を選任している者
(欠格事由に該当している者を管理者としている場合などが該当する) - 法人役員に、(1)から(8)までに該当する者がいる者
この9番の欠格要件に未成年者は該当していますので、原則的には古物商許可の申請をする権利が無いとされています。
しかし、()内に書かれているような場合においては申請可能という但し書がついています。
これは一体どのような場合なのかについて説明していきます。
未成年者が申請できるケースとは?
【結婚している場合】
未成年者でも結婚している場合には成人と同様の能力を有していると判断され、申請者となる権利が得られます。
成年擬制と呼ばれるこの制度は、満20歳に満たない者が結婚をすることにより、成年に達したものとみなすという民法上の制度です。
【古物商の相続人である場合】
被相続人(相続される人)が古物商許可を持って営業していた場合で、その事業を相続する相続人が未成年であった場合でその法定代理人が欠格要件にあてはまる人でなければ、法定代理人を通して自分を申請者として申請することが出来ます。
【法定代理人の許可を得ている場合】
かなり実行する意味合いが弱い方法ではありますが、法定代理人(一般的には親)の同意を得て未成年者が申請を行なうことも出来なくはないです。
この場合は未成年登記という商業登記を行ない、その上で法定代理人の許可を得て、管轄の警察署にて相当の協議を重ねてなんとか実行できるというレベルのものです。
管理者の設置義務について
冒頭で、未成年者を申請者として許可申請するのは全くお勧めできないといった一番の理由はここにあります。
古物商の許可を取得するためには、そのお店毎に責任者となる管理者の設置をしなければなりません。
この管理者に未成年者はなることが出来ませんので、必然的に成人で店舗に常駐出来る人を雇用し、管理者として登録しなければいけません。
管理者も当然ながら、欠格要件に該当する人を登録することは出来ません。
成人で、住所が定まっていて、暴力団関係者ではなく、過去に古物商の許可の取消しを受けた事もなく、犯罪歴もなく、破産者でもなく、心身が故障していないという条件を満たし、かつ、未成年者の下で従業員になることに抵抗の無い人というのは実際問題としてなかなか見つけるのは難しいのではないでしょうか。
申請者と管理者は身内でも構わないので、申請者の親等に管理者になってもらうというケースでの申請は可能ではあります。
しかし親が管理者をする場合、それなら実質的な責任者は親だということになりますし、管理者と申請者は兼任出来るため、申請者も親にするのが普通じゃないですか?という風に諭されることは覚悟しておいた方がいいでしょう。
未成年者が古物商許可申請をしたい場合のまとめ
未成年者を申請者として申請を行なうこと自体は、親の同意を得て、未成年登記を行ない、管轄警察署と協議を重ねてOKをもらうことが出来れば可能ではあります。
しかしこれは一般的ではない申請方法ですし、問い合わせてみたところ相続が関わらない場合では前例も無いようでした。
当グループ内の代表司法書士にもこの未成年登記について確認してみましたが、「実務で行なった経験は無く、一般的ではない登記だし、この登記を行なうにもまずは親の同意書等が必要である」ということを仰っていました。
面倒な段階を踏んでむりやり未成年者で申請を行なわなくても、未成年登記の申請に協力してくれて、管理者になってくれる親がいるのであれば、そのままその親が申請者となって子供に商売を手伝わせて勉強させればいいのではないですか?というのが一般的な結論になりますし、実際に警察署に相談に行ってもそのように勧められます。
「どうしても未成年者で申請しなくてはならない理由はなんなのか?」という点について、明確な理由はあるでしょうか?
どうしてもそうしなくてはならない特段の理由を明確に説明できないのであれば、あえてそんなトリッキーな方法で申請しようとしてくる者に対して警察署は不信感を持ちます。
欠格要件に該当しない成人の方で申請することを強くお勧めしておきます。
また、成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする『民法の一部を改正する法律』が2022年4月1日から施行されます。
この法律が施行されると18歳から成年ということになりますので、18歳から古物商の許可を取得することが可能になります。
2022年の4月に18歳を迎える人はその日まで待ってみてもいいのではないでしょうか。