墓じまいを考える。

遺言書作成のご相談を受ける中で、墓じまいについて質問をいただくことが近年増えているように感じます。

ご相談いただく内容としては主に3つのパターンにわけられていることが多いです。

  1. 代々引き継いでいるお墓があるが、自分以外にお参りをする人間がもういない
  2. お墓が遠いので不便を感じている
  3. 永代供養がいいなと考えているが今あるお墓をどうしよう

いずれの場合においても、自分が動けるうちに解決しておきたい問題であることは間違いありません。

今まで特にお墓については考えてなかったという方も、考えるきっかけになっていただければと思います。

誰もお参りしなくなったお墓ってどうなるの?

先祖代々の遺骨が入っている大切なお墓は、多くの場合は相続人のどなたかが引き継ぎ、大切に守っている状態だと思います。

そのままなんの問題もなく未来へ引き継ぎ続けられるのであればもちろん良いことだとは思いますが、時代が変わり、生活様式が変わり、当初のお墓をそのまま守り続けることは難しい状況になることもよくある話です。

では、誰もお参りすることなく、誰かに引き継ぐ手続きをされることもなく放置され続けたお墓はどうなるのか?というと、いわゆる無縁墓と呼ばれる状態になります。

無縁墓になるとそのお墓のルールによって多少の変動がありますが、最終的には整理されて、遺骨は合祀されることになります。

合祀というのは簡単に説明をすると、他の遺骨とまとめて供養することです。
これはつまり、ご先祖様代々の遺骨がまとめられるだけでなく、どこの誰かもわからない他人の無縁墓の御遺骨ともまとめられるということです。

そもそも合祀で納骨というプランがあるところもありますし、遺骨がまとめられてしまうことが気にならないのであれば、放置して無縁墓になっても特段自分に何か不利益があるかといえば無いとは言えます。

ですが、一度合祀されてしまうと後からこの人の御遺骨だけでも引き取りたい!と思ったとしてもそれは叶わなくなるということは考えておく必要があります。

また、本来であれば正式に墓じまいの手続きをすべきところを放置したせいで、放置している間の管理料の不払いが起こる可能性や、余計な手間を墓地の管理業者にかけてしまうという点は理解しておかなければなりません。

これらの問題点は、生前にしっかりと手続きを行なうことで回避できます。
いわゆる『墓じまい』の手続きです。

墓じまいって何?

墓じまいって最近よく聞くけど、実際問題何をすればいいのかイマイチわからないというご相談もいただきますので、ここで簡単に説明します。

墓じまいには2つのパターンが考えられます。

1つは、お墓に入っている遺骨を永代供養墓に移し、墓石を撤去して整地し、墓地管理会社へ土地を返還するパターン。

もう1つのパターンは、現在お墓がある墓地の合葬墓または他の場所の合葬墓に遺骨を移して墓石を撤去・整地し、墓地管理会社へ土地を返還するパターンです。

永代供養墓の場合

永代供養墓であれば、自分の身内の遺骨が勝手に知らない人の遺骨と混ざることはありませんし、かかる費用は最初に支払うため、年間管理料等の支払いは不要で供養してもらえます。

ただし、永代供養墓は納められる遺骨のサイズや数に限度があります。
新たな遺骨を納めるスペースが空いていないとなった場合は、先に入っている方の御遺骨をまとめて合祀しすることになります。

この場合の合祀は、住職さんがもともと入っている複数の骨壷から遺骨を取り出し、必要があればお骨を小さくして、1つの合祀用骨壷にまとめて納めるという儀式を行ないますので知らないお骨が混ざる心配はありません。

しかし、先祖代々の合祀用の骨壷もいっぱいになってしまった!という場合は、合祀用骨壷の中の御遺骨を合葬墓に移すか、新たな永代供養墓の契約をするかの選択をすることになります。

実際に私は德留の永代供養墓を引き継いだ時にこのタイミングを迎え、次にどなたかを納骨される時までにどうするか考えておいてくださいと言われています。

私が嫁という立場であることを差し引いても、夫も現在合祀骨壷に入っているご先祖様に面識もないし、この場合はこうしてくれ!という本人の気持ちを確認した身内もいないため、自分たちの一存で決めて良いものかめちゃくちゃ困っています・・・。

永代供養墓をお持ちの方はぜひ、自分の遺骨はこう扱ってほしいという希望があるなら強い希望であれば遺言書に書いておくのも方法ですし、なんとなく程度であれば下の世代に口頭ででも伝えておいてあげた方がお互いにハッピーかもしれません。

(ただしこの場合、希望に添えることもあれば添えないこともその時の承継者の状況によってあるはずなので、出来ればでいいんだけど・・・的な感じだと最高ですw)

合葬墓の場合

合葬墓というのは冒頭で少し触れましたが、最初から合祀されることを前提とした納骨方式でのお墓です。

たくさんの方が一緒に眠っているので身内だけじゃなく色んな人が供養に訪れてくれるという利点と、個別のお墓よりも費用面で随分と負担が抑えられるという利点があります。

前項でも触れたとおり、個別のお墓での納骨がスペースの関係で難しくなった際にはこちらの合葬墓に移すことが一般的であるため、お墓参りにきた多くの方が合葬墓も一緒に参ってくれたりします。

既に縁故者の方を見送って、ご自身は身寄りのない状態である方等が最後に自分が入る場所として、最初から合葬墓にしていれば寂しくないよね、という考え方で選択されることもあります。

永代供養墓がいいのか合葬墓がいいのかについては、そこに入る本人と、供養しに行く直接の縁故者の考え方次第ということです。

墓じまいの手続きの流れ

お墓に対する方向性がまとまったので、具体的に墓じまいをしようと思ったら、なにから行えば良いのか、全体の流れとともに確認してみましょう。

どの方法で墓じまいをするかによって多少工程が変わりますが、必要な手続きはほとんど変わりません。

  1. 遺骨を移す引越し先を選定する
  2. 希望の引越し先と契約をし、墓じまいに必要な書類をもらう
  3. 現在契約しているお墓に墓じまいしたい旨を伝え、必要な書類をもらう
  4. 書類作成をし、役所で墓じまいの許可申請手続きを行なう(改葬許可申請)
  5. 役所から許可証が発行されたら、現在のお墓と新しいお墓に連絡する
  6. 現在のお墓で遺骨を取り出す供養の儀式を行ない、墓石の撤去・整地をしてもらう
  7. 新しいお墓で納骨の儀式を行なう

ざっくりとこの7工程に分かれます。
現在のお墓がある場所で合葬墓に入る場合などはもう少し手続きが簡単になります。

費用はどれぐらいかかるのか?

お墓に関わることや供養に関することって、それなりの費用がかかるイメージがあると思います。
実際、墓じまいについても、やはり相応の費用は発生します。

費用がかかる項目としてはざっくり説明すると以下の5つに分類されます。

  1. 現在のお墓での法要のお布施と離檀料
  2. 現在のお墓の撤去・整地費用
  3. 新しいお墓の新規契約費用
  4. 新しいお墓での法要のお布施と納骨料
  5. 墓じまいの許可申請のための必要書類の取得費用や行政書士依頼料

いずれの項目についても、現在のお墓の規模や納められている御遺骨の数、また、それぞれのお墓の規定によって価格は変わってきますので、費用についてはまずはお墓に確認していくしかありません。

お墓の撤去費用等についても、指定業者を使ってくださいと言われればそれに従う以外にありませんし、指定業者がなければ近隣の業者の中でいくつか見積もりを取り寄せるところからになります。

最後の必要書類の取得費用に関しては、自治体によって必要書類の内容や手続きのに若干の変動がありますが、主には現在のお墓と新しく入るお墓の管理者から証明書を発行していただく必要があり、その証明書発行費用がいくらで設定されているか次第です。

行政書士依頼料については、ご自身で全ての手続を行なうのであれば必要ありませんが、ご自身で動き回ることが難しい方や、そんなに時間をかけられないという方はまとめて行政書士に依頼すると費用は発生しますが、格段に楽にはなると思います。

まとめ

現在のお墓にお参りに行くのが大変だなと感じだした時や、遺言書を作成しようと思った時が墓じまいについて考えるタイミングです。

今回の記事では墓じまいをメインに書きましたが、自分がお参りに行くのが大変なだけで、次世代の身内に承継できる場合は墓じまいではなく承継の手続きを行なうことでお墓を正しく守ることが可能になりますので、そちらについてもご検討ください。

自分が行かなくなればもう誰もお参りする人がいないな、となれば、自分の体が動くうちに墓じまいの手続きを行ないましょう。

遺言書を作成される方は、遺言書の作成サポートと共に墓じまいの手続き(改葬許可といいます)を行なってくれる行政書士にまとめて頼むとスムースです。

行政書士に依頼せずに、自分たちで墓じまいをやってみようとお考えの方は、まずは現在のお墓にお参りがてら相談に行ってみてくださいね。

私も当事者なので思うのですが、先祖代々引き継いだ大切なお墓を無縁墓にしたい人なんていないと思います。

それでも無縁墓が問題になっているのは、まだ大丈夫、まだお墓のことは後回しでいいや、と思っている内に予期せぬ出来事が起こってしまったのだろうと思います。

まだ大丈夫、と思えるうちに心配の種は取り除いてしまいましょう。
まだまだ自分が管理するんだけど、次世代の後継者も決まっているという場合は、「自分に何かあった時はこの人が次の承継者になります」という登録をしておくことが可能なお墓もあります。

お墓や御遺骨を守り、供養していく方法は一つではありません。
お話を伺わせていただいた上で最善の方法を提案し、安心できる未来を作るお手伝いをさせていただければと思っております。

困った時はお気軽にご相談ください。