金属くず商とは?

金属くず営業・金属くず商という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
関西の人は耳なじみがある人もいらっしゃると思いますが、関東方面では知らない人の方が多いかもしれません。

この金属くず商という許可はその字のごとく、金属くずの売買をするための許可なのですが、法律ではなく都道府県条例にて定められている営業許可となっているため、金属くず営業条例が制定されていない都道府県においては許可そのものが存在しません。

つまり、金属くず営業条例が制定されている都道府県において、金属くず業の許可を取得した者を金属くず商と言います。

金属くず業とは

大阪府金属くず営業条例
第二条
 金属くず業 業として、営業所を設けて金属くずを売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換することをいう。

大阪府の条例には定義の項目にこのように書いてあります。
このままでも十分理解できる方もいらっしゃると思いますが、わかりやすさを重視してざっくりかみ砕くと以下のようになります。

①お金を払ったり受け取ったり等の利益活動として、②自分のお店を設置して、③金属くずを売買したり、何かと交換したり、④他のお客様から手数料をもらって代わりに売買したり交換すること。
これらの行為が合わさって、金属くず業と言います。

例えば、①の利益活動ではなく無償で金属くずを引き取ったり引き渡したりするのであれば”業”ではないので金属くず業にはあたりません。

また、②のお店を設置しないでお客様のところへ出向き、金属くずを買い取ったり売り渡したりする場合は『金属くず行商』となります。

大阪府金属くず営業条例
第二条

 金属くず行商 業として、営業所によらないで金属くずを売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換することをいう。

金属くず行商は店舗をもたない営業形態のため、その営業活動を行なう個人の住所を届け出ることから、これだけを取得するというケースはあまりなく、金属くず業の許可をとる際に金属くず行商の届出もまとめて行なうのが一般的です。

金属くずとは

金属くず業がどういう時に該当するかは理解出来たと思うので、次は商品となる”金属くず”とは一体どんなものが該当するのかについて解説してみたいと思います。

大阪府金属くず営業条例
第二条

 金属くず 金属類で、古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第二条第一項に規定する古物に該当せず、かつ、そのものの本来の生産目的に従って、売買し、交換し、加工し、又は使用されないものをいう。

こちらもかなりざっくりとかみ砕くと以下のとおりです。
①古物営業法に規定する”古物”ではないもので、かつ、②本来の用途で売買や使用等されないもの。これでもまだわかりづらいので具体例を出して説明してみたいと思います。

例えば中古の自転車をそのまま転売目的で買い取る場合、これは古物に該当するので古物商の許可が必要です。
しかし、自転車をバラバラにしてフレームやホイール等の金属の部分のみをスクラップにして転売する場合は本来の用途ではないので金属くず商の許可が必要になるという具合です。

例えば、18金ネックレスをネックレスとして転売するのであれば古物ですが、18金というゴールド素材として転売するなら金属くずということです。

簡単に要すると、壊れて使い物にならなくなった自転車でもネックレスでも、本来の用途としては使えなくなるけれどももう一度金属として生まれ変わるために、金属の種類ごとに分解して粉砕または溶解して再度固めることを目的として取引される金属は金属くずと言っていいと思います。

ゴミと金属くずの関係

お金を支払って金属くずを買い取る時や、買い取った金属くずを転売する時に金属くず商の許可が必要になるのはここまでの記事でなんとなく理解出来ていると思います。

では、有料じゃない金属ゴミだったらどうなるの?って気になりませんか?
私はめちゃくちゃ気になりまして、ゴミの中間処理場で働く友人とゴミか古物か金属くずか、古物商か金属くず商かについて検討会をしてみました。

例えば、粗大ごみとして捨てようとしている自転車を金属くずとして転売する目的で無料で引き取るのは引き取る時点での目的物の状態はあくまでも自転車なので古物であると言えるだろう。
古物を転売を目的として無料で引き取る行為は、古物商許可の必要性を検討する必要がある。

無料で引き取ってきた自転車をバラバラにして金属部分だけを転売する場合、その行為は金属くず業といえるので金属くず商の許可が必要となる。

また、引き取る時点でバラバラにして金属パーツだけを無料で引き取ってくるのであれば、それは古物には該当しないので金属くずと言える。
金属くずを転売目的で無料で引き取る行為は、金属くず商の許可を検討する必要がある。

無料で引き取ってきた金属くずを転売する場合、その行為は金属くず業といえるので金属くず商の許可が必要となる。

販売行為は許可が必要と書いているのに対して、引き取る行為のみには許可の検討が必要と少しにごして書いているのは、無料で引き取るだけの行為はその目的や方法、回数によっても判断がわかれるからです。
ご自身で勝手に判断せずに、各自治体に相談するか、行政書士に相談
する等して総合的に判断するようにしてください。

まぁ、無料で引き取りだけしてどこにも一切販売はしないなんてことは商売としてありえないのでいずれにせよ販売時になんらかの許可の取得が必要になるとは思います・・・。

ちなみに絶対にしないとは思いますが、捨ててあるゴミを勝手に拾って帰って転売する行為は様々な違法行為に該当する可能性がありますので、捨ててあるからいいだろうと思って気軽な気持ちでゴミを持ち帰るのは絶対にダメですよ!!

金属くず商をするなら古物商許可もとった方がいい?

ここまでで金属くず商と古物商が相当親和性が高い許可であることがわかったと思います。
では、古物商の許可も絶対にとらないといけないの?と聞かれると、業務のフローによっては必ずしも必要ではありません。

金属くず営業条例がある自治体で金属くずだけを取り扱い、古物に該当しないように完全に金属くずの状態にしてから引き取りを行ない、本来の目的に沿った販売を一切行わないでスクラップとして販売する場合、古物商の許可は必要ではありません。

ただ、ここまで読んでいただいた方ならもうおわかりだと思いますが、金属くず商、または古物商の許可だけで業務を行うと、相当の行動制限がかかります。
古物商許可もまとめて取ってしまった方がいちいち悩まないで営業活動はできると思います。

例えばスチールラックを引き取るとき、スチールラックとして引き取ると古物になるので古物商の許可がなければ仕入れとして買い取ることはできません。
え?スチールラックって全部金属やん!って話なのですが、スチールラックは家具なので古物に該当します。

まだまだ使える状態のスチールラックで、見かけた人がそのまま売ってほしいと言ってきた場合においても、スチールラックとして販売するには古物商の許可が必要になります。
金属くず商ではあくまでも、ただの金属の棒やスクラップにして販売しなければなりません。

逆に、古物商とってりゃ金属くず商はいらないんじゃないの?というのも聞かれますが、これは、あくまでも金属くずは引き取りも販売もでず、古物しか取引しない場合であれば金属くず商の許可は不要です。

例えば、プラチナリングはあくまでもリングとして販売しなければならず、プラチナとして販売してはいけませんし、ただの鉄の板を無料で引き取ってきたとしても棚などの製品に加工しなければ鉄の板のままでは販売することはできません。

このように金属くず商と古物商、両方の許可を持っていれば、臨機応変な対応が可能となるのでご自身の商売の幅も広がりますし、お客様に提供する選択肢の幅も広がるので、適法な状態でよりご満足いただける商売が出来るのではないでしょうか?

金属くず商まとめ

都道府県によって、そもそも許可がある自治体と無い自治体がある
②金属くず業が条例で制定されている自治体で金属くずを扱う場合は金属くず商許可が必要
③金属くず商許可のみの場合、対象物が古物に該当しないか気を付けて業務を行なう必要がある
④古物商許可のみの場合、対象物が金属くずに該当しないか気を付けて業務を行なう必要がある
⑤幅広く業務を行なうには、金属くず商と古物商どちらもとっておくと自由度が広がる

自分が行なっている業務、これから行ないたいと思っている業務がどちらの許可が必要になるのか、どちらも必要なのか、考える目安にしていただければと思います。

特殊な事業モデルであったり、特殊な対象物を取り扱おうとしている場合には、管轄する自治体か、行政書士に一度ご相談いただくことをお勧めいたします。

1件のコメント

[…] 中古品やリサイクル品を取り扱う際には、「古物商」という資格が必要です。 ちなみにこの「古物」とは、古物営業法第2条によると、「一度使用された物品(中略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」を指しているとあります。 つまり、一度使用された物だけでなく、新品の物品でも売買や譲渡が行われたものは古物に該当します。見落としがちなポイントですので、覚えておきましょう。 また、「古物商」としての業務を継続的に行う場合は、古物許可申請を警視庁に行う必要があることも留意しておきましょう。 また、都道府県によっては、鉄やアルミ、ステンレスなどの金属くずを回収及び売買するために「金属くず商」の許可が必要な場合があります。金属くず商許可を得る際には、営業所の地域を管轄する警察署の許可が必要です。また、金属くず商は取得後3年が経過すると効力が失われてしまうため、更新を忘れないようにしましょう。 […]