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eスポーツと法整備。

先日、かなり複雑な案件のご相談をいただき、東京まで出張してきました。

ご訪問させていただいたのは株式会社ウォールランが運営するeスポーツチーム、『AKIHABARA ENCOUNT』様の拠点です。

そこで現在のeスポーツ業界をとりまく様々な事情と困難について伺い、思うところがたくさんあったのでブログに書いてみたいと思います。

德留行政書士事務所、AKIHABARAENCOUNTにENCOUNTす。

弊所ホームページより代表者さまからお問い合わせを頂いたのが全ての始まりです。

「自チームを強くするために、韓国人コーチを雇用出来ないか?」

以前にこのブログでも触れましたが、韓国はeスポーツの先進国です。それに比べて日本のeスポーツは世界的に見てもレベルは低く、そもそも認知すらろくにされていません。

実際に私がブログやツイッターでeスポーツの事を発信しても今までほとんど反応はありませんでしたし、仲の良い同僚や友人に話をしてもよくわかんないと言われる事がほとんどでした。

そんな状況なので日本人のeスポーツ選手というのはそもそも数も少なく、レベルも世界的に見て水準が高いとはいえません。それには様々な要因があるのですが、問題の根っこは『認知されていない』ということにつきるのかと思います。

日本でのeスポーツの認知度を上げるために今は様々な企業が動きだしてeスポーツ事業に参入しようとしていますが、結局その企業もどう動いたらいいのかわかっていない、そもそも日本の法律がeスポーツを想定して作られていない、といった問題があるのです。

そのような状況の中、eスポーツには精通していても法令や行政対応には精通していないチームの人間だけで外国人を呼び寄せて就労させるというのはとても難しく、また、法令や行政対応に精通している行政書士でもそもそもeスポーツって何?というような者では話にならない。

そこで、「eスポーツ 行政書士」 で検索1ページ目にヒットするという私のオタク属性に白羽の矢が立ったという状態でした。

德留行政書士事務所、入管業務にENCOUNTす。

まずは韓国人コーチを呼び寄せる事は可能なのか?

そもそも日本に来ていただいて、問題なく就労出来る環境を整えられなければどうにもなりません。そこで、就労ビザを取得するためにはどうすればいいか?という問題が出てくるのです。

就労ビザには種類があり、ビザ取得時の申請内容によって日本での活動が制限されます。例えば、通訳としてビザを取得した者が、SEに転職してそのまま就労するといった事は出来ないということです。

ですので、ビザ取得出来るならなんでもいいからとりあえずそれで!というわけにはいきません。しっかりと就労予定の形態に合ったもので申請し、ビザの交付を受ける必要があるのです。

では、eスポーツのコーチは何のカテゴリーになるのか?というのがまず問題になってきますね。

教育は語学を教えるものではないので違う。技術・人文知識・国際業務のIT技術者、もしくは外国人特有の能力を活かせる業務に係わる者というのはどうでしょう?技能で熟練した技能が必要な職種というのが一番あてはまるのか・・・?

また、それぞれの審査基準に当事者が該当するかどうか、雇用形態との整合性はどうか等、同時に検討していかなくてはならないことがたくさんあります。

今回は検討対象者が3名いらっしゃったので、どの方がどの要件を満たすのか等の詳細を面談にてしっかり打ち合わせをした次第です。その面談内容は守秘義務がありますのでここでは差し控えさせて頂きますが、検討が深まるに連れ、如何ともし難いジレンマがあることがわかりました。

德留行政書士事務所、『興行』にENCOUNTす。

興行とはプロスポーツ選手等の興行に関わる者に交付されるビザで、野球の外国人助っ人等はこのビザを取得して日本で活動をしています。

(競技によっては監督も含めてチームエントリーが必要な競技もある)eスポーツの選手であればこれが適用されるのではないか?というのがこちらの考えだったのですが、この興行というのがとても曲者でした。

そもそも、eスポーツの選手はプロスポーツ選手なのか?ということです。もちろんeスポーツにもプロライセンスはありますし、ライセンスを持っていなくてもチームに所属してチームから給与を得ている選手もいるので、ゲームで生計を立てているという意味合いでは立派にプロであると言えると思います。eスポーツ業界的には。

しかし、入管の興行はあくまでも野球やサッカーやお相撲等の、誰でも当然に知っている体を動かすスポーツであって、誰でもプロかアマかの判断基準がわかるものを前提として考えられています。

eスポーツってゲームでしょ?スポーツじゃないじゃん。ゲームのプロって何?ライセンス?それどこの団体が発行してんのよ怪しい・・・。

というのが一般的な発想であり、日本でのプロゲーマーの認知なんてそのようなものです。それを入管が素直に「そうですね、eスポーツは立派なスポーツですし、ライセンスがあるならプロとして認めましょう!」なんてなるはずもなくw

では入管はどこで線を引いたか。

『日本のプロリーグの1部に所属するチームであること』

『その興行収入だけで運営できていること』

このハードルがどれぐらいの高さなのかお分かりいただけますでしょうか?多分これだけではピンと来ない方の方が多いと思います。これが法令や行政事情に詳しいだけ、eスポーツ事情に詳しいだけ、ではどうにもならない部分なんですね。

今回は入管業務という視点からeスポーツとビザの関係について書きましたので、次回では日本行政におけるeスポーツの取り扱いについて思うところを書いてみたいと思います。