貸借対照表の公告義務化
平成28年6月7日に改正された、特定非営利活動促進法(NPO法)により、平成30年10月1日から、貸借対照表の公告が義務化されます。
ほとんどのNPO法人では、『公告は官報により行なう』と定款にて規定している事が多いと思いますが、今回のこの貸借対照表の公告義務化に限っては、定款を変更することにより、内閣府NPO法人ポータルサイトや自社法人のホームページにて公告を行なうことが可能となります。
※解散時及び破産時の公告は従来通り、官報にて行わなくてはなりません。
定款に定めた方法にて貸借対照表を毎年公告することは義務となりましたので、仮にこれを行なわなかった場合は20万円以下の過料に処される場合がありますので必ず行なうように今から準備をしていきましょう。
定款変更を行なった場合と行なわなかった場合
ここでは、定款変更を行なわず従来の状態で貸借対照表の公告を行なう場合と、定款変更を行なってホームページ上で公告を行なう場合にどのような差が生じるかについて書いていきます。
・従来通り→年1回、毎年官報にて掲載(掲載料は約7万円)
・定款変更→年1回、毎年内閣府NPO法人ポータルサイトか自社ホームページにて掲載(掲載料は無料)
このように、毎年約7万円の差額が今後生じてくることになります。
大阪市では内閣府NPO法人ポータルサイトに掲載する方法を推奨していますが、定款に定めれば自社ホームページによる掲載でも構わないということでしたので、掲載の手間の事を考えると1番利便性が高いのは自社ホームページによる掲載がいいのではないかと思います。
手間よりも信用性の向上に努める方が大切であると考える場合には、やはり内閣府NPO法人ポータルサイトへの掲載が最も公のものとなりますのでお勧めとなります。
どちらの掲載でも法律上の義務を果たす事が出来ますので、お忙しい事業主さまにとってどちらが重要かという事で判断されれば良いかと思います。
定款変更の方法
NPO法人では定款を勝手に変更することは出来ません。
その変更内容により、管轄庁への変更認証申請が必要なものと、届出が必要なものにわかれます。
今回の『公告方法の変更』のみを行なう場合は、届出の手続きが必要となります。
1、公告方法を決めましょう!
- 電子公告(内閣府NPO法人ポータルサイトへ掲載)
- 電子公告(自社NPO法人のホームページへ掲載)
- 法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所に提示
- 従来通りに官報に掲載
- 日刊新聞紙にて掲載
前段では触れていませんでしたが、方法として可能であるという意味では、以上の5つの選択肢があります。
5番は費用がかかるのでそれなら官報でも同じだし、官報に掲載する方がNPO法人の活動としては信用性の面から見ても望ましいかと思います。
また、3番の掲載方法ですと公衆性が担保されておらず、あえてわざわざ秘匿率の高いこの方法を選択しなければならないのはやましい事があるのではないか?と不信感が生じる可能性があるので推奨出来ません。
推奨されているのは1.2.4番での掲載方法となりますので、特段の理由がない限りは1.2.4番のいずれかの方法を選択することを当事務所ではお勧めしています。
2、総会を開きましょう!
公告方法が決まり、従来通り官報へ掲載する以外の方法を選んだNPO法人は、平成30年9月30日までに総会を開き、定款変更についての議題を議決させてください。
この総会に関しての議事録の提出が必要となりますので、総会を開く際は必ず議事録を作成してください。
また、平成30年9月30日までに総会をと書きましたが、ギリギリの9月30日に総会を行なうと、今年は日曜日となってしまいますので、10月1日までに届出を所轄庁に受理していただく事が出来ません。
平成30年9月の最後の平日は28日となりますが、この日に総会を行なったとしても、当日中に全ての書類を作成し、管轄庁へ届出に行き、無事に受理されたのち、10月1日までにホームページにて公開しなくてはならないというかなりの強硬スケジュールとなってしまいます。
当日になって理事の方の病気等により総会が開催できなくなる等のリスクも考慮すると、出来る限り早めにゆとりを持って総会の日程を組まれることをお勧めいたします。
3、届出を提出しましょう!
自社のNPO法人を管轄する所轄庁に必要書類を揃えて届出を行ないましょう。
基本的に必要な書類は決まっていますが、所轄庁によってそれぞれ定められたフォーマットがあるものや、独自の添付書類が必要なもの、独自の表現方法で記載しなければならないもの、等がある場合もありますので、まずは一度、自社を管轄する所轄庁へ問合せを行なった方がいいでしょう。
またお忙しい事業主さまであれば、官公署へ提出する書類の作成および申請は行政書士の専門業務となりますので、行政書士へご依頼いただくのも1つの方法です。
行政書士でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは、法律に別段の定めがある場合を除き行政書士法違反となりますので、そのような方に依頼を促された場合はくれぐれも騙されないようにご注意ください。
ご依頼される場合には行政書士の資格証の提示を求め、その後、下記URLの日本行政書士会のホームページにて本当に登録されている行政書士かどうか身元の確認を行なってください。
私の德留の德の字もそうなのですが、旧字表記のものは正しく旧字で検索しなければ結果に反映されませんので、登録番号での検索が便利かと思います。
https://www.gyosei.or.jp/members-search/
4、貸借対照表を公告しましょう!
届出が正式に受理されましたら、あとは定款に定めた方法により貸借対照表を公告するだけです。
公告が義務付けられた平成30年10月1日時点にて正しく掲載が行われていれば無事に完了となります。
内閣府NPO法人ポータルサイトへの掲載を選択した方は、下記URLのホームページにて新規ユーザー登録を行ない、掲載の手続きを行なってください。
※所轄庁が掲載するものとは別に、NPO法人が入力する情報欄への掲載が必要となりますのでそちらを行なわねば義務を果たしたことにはなりませんのでご注意ください。
※5年間以上の掲載を行なう必要がありますのえ併せてご注意ください。
https://www.npo-homepage.go.jp/
自社ホームページへの掲載を選択した方は、自社のホームページにて、貸借対照表を誰でも見ることの出来る場所へ掲載を行なってください。
TOPページに表示しなければならない等の規定はありませんが、奥深くなかなか探し出せないようなところへの掲載は認められないとの指示を大阪市より申し付かっておりますのでご注意ください。
なお、こちらも5年間以上の掲載を行なう必要がありますのでご注意ください。
従来通り官報への掲載を選択した方は、1事業年度分につき1回、毎年必ず掲載を行なってください。
日刊新聞紙への掲載を選択した方も同様ですが、掲載する新聞紙は各都道府県域よりも広い地域で発行される新聞紙へ掲載を行なわなければなりませんのでご注意ください。
まとめ
現在認証を受けている全てのNPO法人さまにこの通達は既に届いていることと思いますが、手違いで読んでいらっしゃらなかった場合や、見たけどまだ先のことだと思って忘れていたという声も届いています。
法律によって定められた義務ですので、残念ながら忙しくて忘れてたでは済まされませんので、これを機にぜひ今から準備を始めていただければ十分に間に合います。
そもそも自社ホームページなんて持っていないという場合のご相談も德留行政書士事務所では承っておりますので、どのように対応していくのがこれからの御社にとって1番良い方法なのか、一緒に考え、ご提案をさせていただけます。
このページを読めば手続きが出来るようにわかりやすく書いたつもりですが、ご不明点やご興味を持たれた事業主さまがいらっしゃいましたら、お気軽にお電話かメールフォームよりお問い合わせをいただければと思います。